作者近況 1月 12月 11月 10月 9月 8月 7月 6月 5月 4月 3月以前

2/29 月曜からの撮影に変更が在り、準備の為にスタジオへ。美学校の作品展の引き取りが在り、時間ギリギリの4時頃に東京写真文化館に出向く。

納品の時もそうだったのだが、今を生きているエネルギーに圧倒されながら、出展者達の打ち上げに参加する。それぞれの作品と、それぞれの作家の顔ぶれが初めて1つになり、新しい発見で楽しいひとときを過ごす。彼等に必要なのは方向性を見い出してくれる優れたパートナーである。皆、模索しながら幾つかの道を手探りで進んでいる。それぞれのテーマに於いてその作品が、入り口なのか、方向転換へのデッドポイントなのかそれを見極める事は本当に難しい。

ひとり一人の作品にポイントを絞って考えて行くと、それぞれまちまちな結論が生まれて来る。そこで完成し、次のトビラを開かなければならない人もいれば、やっと開いたトビラの中へ、押し出してやらなければならない人もいる。本当の所に気付いているのは当人なのだが、そのテーマへの思い入れの深さは人それぞれである。

同じ事を自分にも当てはめながら考える時、自分を支えてくれる言葉は思いつかない。他人へのアドバイスの難しさを切実に実感する。優れた作家が必ずしも良いアドバイスができるとは思わないのだが、何も作らない人間に彼等の気持ちが解るとはどうしても考えられないのである。


2/28 だらだらと海岸線を南下して、夜があける頃水戸に着く。少し仮眠をとった後市場で魚を買い東京に戻る。高速を使わずに700キロ程の距離を走り見なれた日本の風景が通り過ぎた。見い出すべき物は独自の造形への切り口である。

久しぶりに友人と夕食を取る。沖縄の泡盛と水戸で買って来た魚が緊張をほぐして行く。


2/27 朝は雨。10時を過ぎて幾らか小降りになる。朝からの強風は更に強さを増し、歩いていても何度も風に押し倒されて転んでしまう。峠近くに在るダムは、天候の状況によって風が強く、数年前にカメラや脚立もろとも飛ばされて、リンホフを改造するきっかけになったのもこの場所である。

真冬の積雪時に湖面迄下りられるダム湖は少なく、中でも仙人峠近くのこのダムは湖面の氷の状態が良くて特に気に入っている。以前にも多くの作品を得ている場所だけに今回も少しでも追加して帰りたい。そんな考えがここ迄足を延ばさせたのだが、やっと辿り着いてみるとすっかり氷が溶けてしまっている。

たとえ氷は溶けていても湖面のリフレクションや波紋などは撮れるかと思い、雨が止み、風が強くなってからも昼過ぎ迄はなんとか頑張ったのだが、カメラを出したのは1度だけ、それも風が弱くなるのを1時間以上も待って結局撮らずに諦める事となってしまった。

湖面近くの凍土は完全に溶けており、歩いていても膝迄泥に浸かって動きが取れなくなってしまう。車迄戻った時は泥まみれでくたくたになっていた。

体が温まり意識が回復するにつれて、もう冬は終わりなのだとなんだか少し穏やかな気持ちになって来た。他の場所を探して撮影する事も考えたのだが結局東京に戻る決心をして移動を始める。

盛岡に戻るのでは無く釜石に向い、海岸線を南下する。車を走らせながらこの冬を振り返り、少しずつだが自分の姿が見えて来る。

ここ最近写真集の為のデジタルワークに集中しその未知数の可能性に振り回されている自分がいる。しかし本来であれば、この作品にしてももっと自分に引き寄せた抽象的なビジョンの為に開発して来た物である。東京を離れ現在の生活を変える事があまりに大きな重しとなり、ビジネスに結び付ける事だけが一人歩きしているのでは無かったか?もちろん売り込みの最中なのだから考え方自体は間違ってはいない。しかしそれをプレッシャーとしてもがいていたのでは仕方が無い。

もう冬は終わりである。モノクロは取れなかったが、確かに自分の作品としてのシリーズは完成している。ビジネスの呪縛から開放されればきっと本来の自分の世界に残る物が見えて来る。それはそんなに先の事ではない。

夢を語り、希望の中を生きている振りをしても行動を伴わない夢など、幼稚さが生み出すでたらめに過ぎない。しかし自己を見失った行動も目的のないただの遊びに終わってしまう。過去を記憶にとどめない事は私には愚かな事に思える。


2/26 ここのところ色々な考えが頭の中を廻っている。やはり雪が解ける前にモノクロの作品を追加しておきたい。スケジュールを調整し何とか週末迄の撮影旅行を計画する。

先日の美学校の作品展もそうなのだが今を精一杯生きている人達に接する事は良い刺激になる。発表ギリギリ迄何日も徹夜しながら作品を作るエネルギーはたとえ一時的な物で在ったとしても、彼等の心の中に大きな足跡を残すのだろう。刺激になる物はいつも、現在から抜け出そうとしている人達で、腐敗を誘う物は自己の過去を記憶にとどめない多くのOB達なのかも知れない。

盛岡は予想外に暖かく、山間部ですらあまり雪が無さそうだ。明日は仙人峠へ。


2/25 モノクロのカメラを用意して東北へ。

2/24 昼過ぎ迄はデータのバックアップ、銀行に寄って入金を済ませてから、1点作品を出させていただいている美学校写真工房展を見に行く。会場は赤坂の写真文化館の5F.stageで、美学校の写真工房の学生の終了製作が展示されている。

去年に引き続き、作品展を見る事となったのだが、女性が多いせいか作品が伸びやかで、奇を衒ったり、威圧感のある物は少なく、肌に触れるような感覚で優しく見る事ができる。作品のクォリティーも高くそれぞれの学生が模索しながらそこに辿り着いたのを見ている方も体感できるようなゆとりのある、点数配分が感じられた。

赤坂の東京写真文化館では4Fでアメリカ西海岸の風景をテーマにした写真展が開かれており、アンセルアダムス他のファインプリントを継承する作家の作品がそれぞれの作家別にかなりの枚数で展示されていた。ここの催しは以前からどうも府に落ちない点が多いのだが、今回もアンセルアダムス、ブレットウェストン、エドワードウェストン他、現代に技術や感性を継承するポール.・コザール等の現代の作家が展示されているのだが、ScenicBeautyというタイトルは余りにも的を得ておらず、アンセルアダムスにまつわる作家であればもっと相応しい作家例えばJhon Sexton などでも良いだろうし、エドワード、ブレット、コールと言うのは余りにもこじつけの感がある。

西海岸の写真家と言うのは、皆同じように見えてはいても、それぞれの作風に微妙な違いがある。本当に数多くの作家が同じような被写体に向って微妙な感性を凌ぎ合ってこそ、あの繊細な世界が現在迄継承されて来た事の意味が伝わるのでは無いのだろうか。ここに持って来ては色々な意味でエドワードウェストンは役不足である。

朝から続いていた激しい頭痛が外出して姑くの間はおさまっていたのだが、色々な作品を見ているうちにまたひどくなって来た。会場を出た後は他の写真家の方達と近くの居酒屋で遅く迄話をする。今の私は何かを見たいのだがそれが何なのかが解らない。なにか全てのものが心の奥迄届いてこないような気がするのは何故だろう?


2/23 8時に民宿を出て東側の海岸線を撮影しながら南下する。マングローブやビーチなど一般的な場所も撮影し絵のバリエーションを増やして行く。

途中薮地島のジャネーガマを見に行ったのだが、熱心に拝んでいる人がいて撮影するのは場違いだが、ここに来てみて沖縄の独自の信仰や文化の一端を垣間見る事が出来た。洞くつの入り口にはゴザのような物が置いてあり、ポツポツとやって来る人が座って無心に祈り続けている。車がやっと通れる草の茂った未舗装の道を岬迄けっこう走り、誰も来そうに無いこんな洞くつに、何処からともなくやって来た人が熱心に祈りを捧げている。

今回の撮影行程は、良い写真を撮ると言う事だけに絞って考えると、敢て本島にこだわらず、離島を廻った方がよいのではという考えも最初はあった。しかし私自身、沖縄そのものには何度も来てはいても、どれ程本島の各地に就いて知っている物なのか、実際に廻って確かめたかった部分がある。島の殆どが観光のテーマパークと化した本島にとって、静かな原風景はヤンバルにしか無い、そんな勝手な思い込みは確かにあたっていたのだが、気紛れに通り過ぎる観光客には見えない部分に違う側面がそのままのこっている事もまた事実なのかも知れない。

テーマを決めて写真を撮る事の難しさを感じる。1枚の写真、それが沖縄の本島であるならば、逆さにしてみた時に違う切り口が見えて来る。われわれはなにか安定する1つの尺度からどうしても抜けだせない物なのだろうか?

夕日の落ちるギリギリ迄近くの町などを撮影し最終の飛行機で東京に戻る。終電を乗り継ぎ自宅に就いたのは1時頃。明日も撮影が続くような興奮状態は中々おさまらない。追い詰められているようにのどが乾き達成感は少しも無い。この写真に関してはこの後の選ぶ作業が、ある意味本当の撮影であり、次のステップはこれから始まる所である。


2/22 明け方からの雨が激しく降り続き止む気配が無い。色々な所で待機して止むのを待つのだが、途切れる事無く降り続き、結局昼を過ぎた頃、今度は嘘のような晴天となった。

昨日に引き続きヤンバルの古い村を撮ったのだが、昨日と違う切り口のものがやっと撮れ始め、ほっとしたのもつかの間で、ふと気が着くとまた昨日と同じようなモチーフを探し求めている。

いつも夜になると明日の事を考えて、最良の結果を生むように撮影の方向を決めているつもりなのだが、必ずしも結果が付いてくるとは限らない。テーマを広く持つように自分に言い聞かせてはいるのだが、ついつい旨く行きそうな物から探してしまう。

今夜も今迄のカットを全て見直して明日の予定を考える。考えていると夢の中でも同じ事を考えていつの間にか朝になる。今日の民宿も皆親切で沖縄の暖かさが私を支えている。

明日は最終日。予定では広範囲に造形的な物を探す。


2/21 今日からは島の東側を撮る。沖縄本島全体が観光のテーマパークの様になった現在、このヤンバル地帯だけは昔の静かな面影を残している。大きな国道に村を寸断される事も無く、海、山、村が1つのものとして体感できる唯一の場所のように感じる。

1つ1つの集落を歩き回りいくつかの風景をカメラに納める。明日もヤンバルに宿をとったので時間を掛けて探すつもりだ。


2/20 那覇市内は交通規制が多く抜け出すのに時間が掛る。昼前にやっと名護市に着き半島を廻ったり橋を渡って小島に行ったりしていくつかのカットを撮る。

途中何度かカメラの不具合がありその都度時間を掛けて修理や調整を進め、やっとミスショットの確率は少なくなった。寒い土地に合わせてクリアランスをとってあった物だから、Tシャツ1枚と言うこちらの厚さでは全てが柔らかくなり過ぎて、調子の悪さに少し納得してみたりする。

昨日に比べるとかなり体調は良くなった。恐る恐る予約した2食付きで3500円の民宿は、食事が旨く、風呂が無い事以外はまずまずだ。オリオンの壜ビールが旨い。


2/19 かなり早い便を選んであったので10時過ぎには沖縄に着く。ネットで予約したレンタカー会社は配車の準備が整っておらず、結局昼過ぎ迄車の手配を待つ事となる。最初は腹が立ったのだが思い出してみるとこちらではこれは当たり前、時間の感覚は完全に噛み合って無い。

私の乗った飛行機よりも何本も後の便の人達が車の手配にやって来るのを、イライラしながら見ていたのだが、少しずつ南の時間に慣れて行く。

昨日からの疲労と睡眠不足に足の傷みも加わって、状態としては最悪なのだが、1カット1カットと撮るうちに精神的には少しずつ軽くなって行くのを感じる。こちらは思った以上に日が長く8時を過ぎて那覇のホテルに入る。今日1日で那覇より南はほぼ全て見て廻った。明日の宿の検索や、撮影地の下調べで中々休む事ができない。


2/18 明日から沖縄に出掛ける為今日のスケジュールは慌ただしい。午前中の料理の撮影はデジタル、フィルム共に今日中に納品を済さなければならない。足の傷みを気にしながら1日中走り回り、どんなな小さなミスがあっても明日からの撮影は中止せざるを得ない緊張がついて廻る。

撮影旅行が近くなると緊張が苦痛に変わり、早く始まって早く終わってくれれば良いと思い始めるのだが、今回の沖縄も自分の中の期待が大きくなればなる程緊張と不安も大きくなる。前日に急ぎの仕事が入った事は仕方が無い事だし、済ませておけば幾らか経済的には気が楽なのだが、出発迄の緊張は他の感覚には例えられない物が有る。夜12時を過ぎてスタジオに戻り機材をチェックして準備をすすめるのだが、何かを忘れているのでは無いかと、かえって頓珍漢な行動をしてしまう。

そんな中、納品を終えた後やっと時間を作る事が出来、知り合いが出品しているアマチュアの写真展に寄る事が出来た。アマチュアの人達の作品は雑誌とかで見る事はあっても実際のプリントを展覧会場で見る事など10年以上経験の無かった事である。そしてその中にある世界は私が写真を始めた頃とテーマそのものは変わっていないのだが、明らかに少しでは有るが何かが進化しているのである。これは旨く表現する事はできないのだが、なにか上質な世界に緩やかに進んでいるのが感じられる。

写真を始めたばかりの頃、やはり同じようなテーマを同じような技法で私自身も真剣に取り組んでいたのだと思う。そしてそのテーマが1つ形になるごとに、なにか違うテーマを探し、次から次へと新しいテーマを探し求めていた事を思い出す。しかしいつ頃からか上質な物へ向うのでは無く、テーマそのものに疑問を持ち核心に迫ろうと模索し始める。新しい世界は未知と無限の独自性の中に微かに見えかくれし始めるのである。

アマチュアイズムと言う物を長い間嫌悪感を感じたりする事も有り、顧みる事は無かったのだが、なにかその中には自分の出発点が有るような拒絶感が有ったのかも知れない。今彼等の作品をじっくり見ていると今迄とは違う、柔らかい表現で自分の作品とアマチュアの世界を隔つ良い言葉が浮かんで来るような気がして穏やかな気持ちになる。

会場を出た後でカメラメーカーのデジタル部門の開発者の方に会って現在私の使用しているカメラのソフトなどについて相談にのってもらう。色々興味深いアドバイスが得られとても励まされる気持ちで帰路につく。

今の私の不安や焦躁をぬぐい去ってくれる物は一体なんなのだろう?とにかく新しい物を作り続ける事が今迄の自分を支えているのだが、永遠に新しい物を作る事など現実的には不可能である。人は老い、その力は必ず衰えて行く。もうすぐ夜が開けて沖縄に発つ。


2/17 午前中に預かっていた撮影をスタジオで済ませ、明日の取材の機材を用意する。エレベーターの無いビルの3階との事で、コンパクトにまとめなければならないのだが、いくら減らしても2度や3度では運べない量である。予算の都合上、良いスタイリストを頼む代わりにアシスタントを諦めたような部分が有り、この選択は明日の仕上がりにどう影響して来るのだろうか。今の所体調は良好なのだが、、、

昼になって写真家で美学校の講師をしている西村さんが、今度の作品展に出してもらう事となった作品を家迄取りに来てくれる。出していただく上に家迄取りに来てもらうのはなんとも恐縮なのだが、ここしばらくは動く事ができなくてやむを得ずお願いする事となった。

考えた末に作品はHPのビジュアリゼーションで紹介している窓枠の写真に決めたのだが、HPの技術的な解説を見た上で細かく見てもらえれば、私のモノクロに対する考え方が少しでも伝わるのではとの選択である。

夕方になって先日久し振りにお会いした、デザイナーの吉野さんと出版社に出向く。直接の結果は得られなかったが、良い感触の中でしばらく和やかな時間を過ごす事が出来た。好意の中に有るアドバイスはいつも重要な推進力である。

三軒茶屋迄戻り懐かしい町並みを散策した後、思いつきで入った店で食事をし、そこそこの時間に帰宅する。他にも1件誘いの電話が有ったのだが、明日の事を考えてできるだけ早く休みたい。色々な人に会い目まぐるしい1日なのだが、何1つストレスになる物は感じない。


2/16 久しぶりにスタジオで撮影が有り、午前中から準備して待機する。連絡を待って準備していたのだが始めたのは午後からである。

久し振りに会うクライアントの担当者と世間話や近況の会話をかわしながら撮影し、終了したのは8時過ぎ。明日の込み入ったスケジュールを考慮して渋谷の現像所迄フィルムを届け10時前に帰宅する。

沖縄に向う前の僅かな間に色々な事がからみ合っている。赤坂で開かれる展覧会に1点出してもらう事になり今日作品を用意したのだが、前日の18日にはニコンの友人の参加する企画展が有りどうしても見に行きたい。


2/15 家事を済ませ昨日と同じように風呂に入ってくつろいでいたのだが、今日は昨日とは違って人に会う予定がある。何人かを家に呼んで食事でも作ろうかと思っていたのだが、急だった事もあり2人で恵比須のはずれにある行った事のないアイリッシュパブに行く事となった。

昼間の暖かさが嘘のように冷たい風が吹きビールを呑むのはちょっと考えたのだが、やはり久し振りに呑むギネスは旨い。色々な話を聞きながらギネスを2パイント、シングルモルトをショットで2杯呑み、幾らかあたたまって店を出てそれほど遅くならずに地下鉄で帰宅した。

ここ数カ月の生活の中で人と酒を呑む機会はけっこう有ったのだが、いつも他人事のように感心の無い話題が一方的に過ぎて行く。今日はそんな自分には珍しく、話の中に出て来た町の事などを自宅に戻ってからしばらく反芻した。


2/14 昨夜久しぶり遅く迄、最近の作品を見ながら暗室で酒を呑んだ。心の中では1つの区切りを迎えたようで、沖縄に行く前には忙しくなるのだから、この週末ぐらいは気を許しても良いのでは無いかと言う甘えがある。

考えはじめると、やらなければならない事は限り無く迫っているのだが、なにか自分について味わわなければならない部分を置き去りにしているようで、心もとなくもあり、休んでみたくなったと言うのは見え透いた言い訳なのだろうか?

ベッドから起きだしたのは3時を過ぎた頃、食事の用意に乾物のホタテで出汁を取り本格的な中華粥を作る。草津温泉で買って来た湯の花を風呂に入れて温泉に何度も浸かりながらケルト音楽を掛け、友人から送られて来た、はた万次郎のウッシーとの日々3の文庫本を一気に読み終える。

朝日新聞のネットサイトに載っていたのだが、岩手県の山奥の民宿の話が興味を惹いた。電話も無く予約は手紙だけ、海外での生活経験を持つ男女が結婚して移り住み、古い民家を借り受けて民宿として管理いしている。何故だか口コミで広まって今では1000人以上の人々が1年中訪れている。国内だけで無く海外からも問い合わせがあり、彼等の生活はアタカも世界の中心にある最もすばらし理想郷のようである。

勿論記事の一遍から想像するだけでは、実際の暮らし振りは解らない。私の知っている岩手のその町辺りは限り無く山奥で自然の厳しさは北海道を遥かに超えているのではないかと思われる。しかし重要なポイントは彼等の人その物なのだろう。そこの生活の価値を見い出して、緩やかに伝わる独自のエネルギーで世界中に発信している。何ごとも焦ってはいけないが、時の流れは読み取れる力が必要だ。


2/13 打ち合わせの為スタジオで過ごしながら空いた時間で沖縄で使う機材の調整と改良を済ませる。カメラのリモートコントロールや、セルフタイマーを作り直し、少しでもミスショットの無い様に組み立てるのだが、スタジオではちゃんと動作するのだが、いつも現場で急に調子が悪くなるのは何故なのか?予想を超えた色々な状況に影響を受けているのだろうか?

今の所リモートコントロールはあまり使っていない。いつかは必要なパーツなので念入りに調整し準備は整っているのだが、実際に使ってみるとまだまだ不都合が見つかりそうである。

夜になって先日偶然のプレゼンから今回の写真集の企画を強力にバックアップしてくれる事となった会社に写真集のサンプルを届けに行く。プレゼンは通ってナンボの物なので時間と条件の勝負なのだが、私の中では出版社に対するこだわりは無い。たとえ何処であってもデザインやコンセプトが伝わればそれだけの販売結果はついて来るのでは無いかと言うのが、今の所の私の考えのレベルである。

あまりに多くの人達の協力が得られてかなり、と惑っている自分ではあるのだが、期待を裏切る事の無いように、次にできる事はさらなる撮影だけだと考えている。

先月急なプレゼンから1年間のシリーズを撮影する事となった料理のパンフレットは、早くも来週1回目の撮影を迎え、今日やっとスタイリストとの打ち合わせが終了した。こちらも少ない予算で協力してくれるスタッフに感謝しつつ、水曜日の撮影に全力を注ぐつもりである。


2/12 昼過ぎの打ち合わせの空いた時間に近所の美容院で髪を切る。人に会う事が多くなり、少し気持ちも引き締まるような期待もあったのだが、あまりに久し振りの為かえって寒くて風邪を惹きそうである。

少し暗くなり始めた頃、世田谷にあるデザイン事務所を訪ねたのだが、デザインに関して私のもっとも信頼を寄せている人で、今回の写真集に関しても非常に良いアドバイスをしてくれた。来週には紹介してくれる出版社に同行していただく事になり、恐縮である。

夜る遅くなってから、銀座の出版社で人に会い、打ち合わせの後久しぶりに一人で呑む。終電間近の地下鉄で帰宅。とても良い一日だ。


2/11 昨日の売り込みで積極的に協力してくれる事となった2社の為に写真集のサンプルを2部ずつ追加で製作しなければならない。最初から余裕を持って3部作ってはいたのだが、今手許にある物は既にかなりくたびれてしまっているので、どうせなら新しい物を2部作って出版社へのプレゼン用に預けてしまった方が手っ取り早い。

簡単にサンプルと言っても、50ページと40ページ。2部ずつ作るとなると予備を1枚加えたプリントだけでも300枚はプリントアウトしなければならない。経費に関しては今は問題にする時では無いのだが作業的には丸一日掛かっても終了迄漕ぎ着けるのはさすがに無理だったのかも知れない。

結局後少しと言う所で断念し残りは明日時間を作り何とか納品する事を考えなければならない。

来週の沖縄行きのチケットが宅急便で送られて来た。出発の直前迄仕事に終われるスケジュールなのだが、今のテンションを維持する事だけが課題である。沖縄にこそ撮る物があると今はただ考える。


2/10 午後一件の打ち合わせ以外は昨日完成した作品のファイルを持って色々な所へ売り込みに行く。売り込みと言うと営業のように聞こえてしまうかも知れないが今の所は色々なジャンルの人に意見を聞きに行くと言った感じである。デザイナーやコピーライター、書籍の装丁家や出版社の編集者などで、午前午後合わせて10件以上の会社を廻り本当に色々な人に会って意見を聞いた。

始めて人の目にさらす事となった作品は私の想像を遥かに超えて好評で、何処でプレゼンしていてもデスクの周りに集まった人がどんどん増えて行くような状況で、私の考えていた世界がやっと他の人にも受け入れられていくのを強く感じる事が出来た。

写真集の製作にあたって私の考える基本的な条件は自費出版である。売り込んで製作するのはあくまでもシリーズ化された取りおろし物であり、その中で最も良い物だけを抜粋し好きな形態で販売する事が最終的な夢ではあるのだが先立っては何だかの一歩を踏み出さねばならない。

サンプルとして先月から撮り下ろした北海道と奄美大島は、そこそこの完成度を持って受け入れられているので何とかこのままで出版できる環境迄持ち込んで、これから撮り下ろす物へつなげて行くのがが希望である。恵比須から代官山を経由して、自宅の近く迄戻り、近所の店で更に色々な人の意見を聞いたのだが、自分にとってはこれが一番の励みになったような気がする。昨日迄は世の中に一人の味方もいないと思っていた自分が、今日は多くの友人に励まされて最高の時を送っている。全てはこれからである。


2/9 昨日の続きの作業に取り掛かったのは夕方の6時過ぎ、こまごました雑用で中々取り掛かる事ができない。夜になって本格的に北海道の写真をポートフォリオにして行くのだがマットの紙を使っている為彩度が落ちてしまって出力のプロファイルを作り直さなければならない物が予想外に多い。プリントの再現性についてはかなりのレベルで妥協しているつもりなのだが、あまりにひどい物はやはり何度でもやりなおさなければならない。

表紙の写真に手こずって結構時間が掛かってしまったのだが何とかサンプルの製作を終了する。あとはこの週末に手掛けるはずだったプレゼン用の資料とサンプルを作らなければならないのだが、これに関しては明日でも良いと考えて今日の所は作業を終了する。始めてみれば結構な時間が掛かる作業なのかも知れないので油断は大敵である。

風邪を惹いているらしく薬を飲んでいないと体中が痛く、去年の今頃の苦しかった体調を久し振りに思い出した。僅かな睡眠時間にも色々な夢を見て目が覚めてからしばらく夢について考える。懐かしい物もあり、せつなく腹立たしい物もある。ともかく明日からは持ち歩いて人に見せられる作品ののサンプルがある事が何よりも嬉しい。


2/8 昨日よりも激しい頭痛の中で目が覚めて昼前迄は動く事ができない。やはり風邪を惹いているらしく薬を飲んで幾らかは調子が良くなった。

昨日明け方迄眠れずに考えていたのだが、このファイルのままの状態でプレゼンするのでは無く、今日1日で何とか違う形にイメージアップする事はできないのだろうか、これは全体の枚数やイメージがファイルになってから考え始めた事なのだが、もう少しこじんまりした形で写真集に近い形態のサンプルを作った方が良いのでは無いのだろうか、、、、この考えの結論として今日はサイズを10%程小さくした物を出力して製本とはいかないのだが、表紙を付けた蛇腹のような形態の物を製作してみる事にした。

直接手が触れる事になる為紙の材質を考え直さなければならず、まず出力用の紙を何種類か買って来てその中で製本に都合の良い物を選びだし、全ての写真をプリントし直したあとそれを繋いで本のような形にして行くのであるが、予備も含めて数点は出力する為、紙の枚数も数百枚は必要になる。インクも含めて、釜石に撮影に出掛ける為に用意してあった予算を統べて注ぎ込んでしまう結果となった。

昼過ぎに始めた作業のせいと、選んだ紙をもう一度渋谷に買い出しに出掛けなければならなかったせいで、奄美大島の作品集が完成した時は既に深夜になっており、それから本命である北海道の方に手を付ける事になったのだが、流石に薬を飲み続ける体調の悪さで朝迄作業を続ける事は断念し、残りの作業は明日に持ち越す事にした。

写真に限らず見せ方1つで作品の印象は大きく変わる。紙をマットにしサイズを10%小さくする事でかなり違った印象が伝わって来るような気がする。明日は残りの北海道に取り掛かる。他にもやらなければならない事が多すぎて少し気が滅入る。


2/7 家から外に出る事も無く1日中ファイルの製作に没頭する。午前中から夕方迄は北海道と奄美の中からそれぞれ40点の作品を選びだし、何点かの作品を調整して再び出力する。深夜になる頃に全ての作品が整ってやっとファイリングの作業に取り掛かる。夕方から頭痛に悩まされているのだが、風邪を惹いて熱があるのか、長い時間作業に集中している為に具合が悪いのかが解らない。

時間に追われながら作業しているので、ファイルのクォリティーは凄まじい物なのだが、細かい事はさておいて何とか全体を把握できる状態にはなったような気がする。自分でもファイルとして、まとまった形で作品を見る事が初めてなので善し悪しはともかく1つの区切りになった事は確かである。

短い時間に集中して作業を続けていたのだが、これでやっと暗室中に散らばっている1000枚の写真を片付ける事ができる。これほど多くのプリントから選んだ物がこの程度なのかと考え始めるときりが無いのだが、全ては未だ始まったばかりである。19日からの沖縄も全てのチケットが取れてやっと具体的なスケジュールがたてられるのだが、それまでに釜石に出掛けるかどうかが頭の中で中に浮かんだ課題である。明日はプレゼン用のサンプルのファイルを出力する予定。作業には中々切れ間が無い。


2/6 昨日使い切ってしまったプリンターの用紙と無くなりそうなインクを補充する為に渋谷迄買い物に出掛ける。それ以外にも今回の奄美と北海道の写真をファイリングする為のブックを探さなければならない。

ビックカメラで必要な物をそろえたあと色々な店を探して見たのだが、中々丁度良い物が見つからず結局シンプルなクリアファイルを買う事にする。時間をかければ他に良い物もありそうなのだが、取りあえず仕上げてみて印象を探る事が必要だ。

デジタルの作品を仕上げていて、少なくともこのブックに取り掛かってからは、他の作品への感心が遠ざかっているのを感じる。モノクロの撮影に釜石へに出掛けなければならないと感じてはいても、差し迫った欲求と言う物をここ2、3日は感じていない。

今手掛けている作品はあく迄ビジネスとして考えているので、どのくらいの予算を使いどのくらいの収益が上がるかを計算しながら進めているのだが、広告写真では無いのだから収益以外に自分に残る物が重要であり、それでいてより多くの利益が上がれば本当にすばらしい事だと思う。

仕事として、ビジネスとして、今迄自分のして来た事はスタジオマンやアシスタントに始まり広告の製作にしても、何処にも自己の存在を感じる場所の無い物ばかりだった。それ故に独自のモノクロのプリントに打ち込んで来るエネルギーが持続できた事も事実なのだろう。ただひたすらお金を稼ぎ、そのお金で作品を作る。そのスタンスは今も全然変わらないのだが、お金を稼ぐ事に自己の存在が美しく反映していたらいったいどんな人生なのだろう?亡霊のように私を支えている物は一体何なのだろう?


2/5 昨日より体調は良くなって作業の効率は一気に良くなった。一歩も外に出る事無く1日中作業を続けたのだが、先日から予定外にやり直しが多かった為、プリンターの出力用紙が足りなくなり15点程を残して今日の所はは終了する事となる。

作業の予定が1日遅れた事で釜石に撮影に出掛けるのが微妙な状況になって来たのだが、2月のスケジュールはあまり詰まっていないので、取りあえずは今の作業に集中する。


2/4 朝から作業を始めたのだが遂に風邪を惹いてしまったらしくかなり調子が悪い。何度も休みながら写真を選んでは調整して出力する作業を繰り返すのだが、物によっては中々上手くいかずに10枚程出力してやり直す物もある。少しづつ雪景色の調整に慣れて来てからは、早くはなったのだが今日一日で処理できたのは全体の1/3程度である。

北海道で撮影した物は期間が長かった為結構な量で、プリントしてある物だけでも400枚以上はある。僅かな期間にこのカメラの映像を沢山処理したせいで、目が超えたと言うか慣れが生じたのか、当初とは違った写真に興味が湧いてみたり、かなり自分の思考も変わって来たように感じる。とにかく早急に作品としてまとめなければならないので、現時点の感覚で一気に仕上げる事が課題だと考える。


2/3 昨日に引き続き朝から奄美大島の写真を出力する、約250枚のテストプリントから最終的にセレクトした物は40枚程で更にその中から良い物だけをポートフォリオにする予定。1日中引きこもった作業にかなり気が滅入るが、明日からは北海道のセレクトに取りかかる。2日間で終わらせる事を考えるとかなりハードなスケジュールになりそうだ。

2/2 いつの間にか雨になり、スタジオに出かける頃には久しぶりにビニール傘ではぬれてしまう程の振り様になった。遅れていた請求書を用意したり、納品するデータを整理して、3時前に表参道迄納品に行く。

忘れていたのだが、奄美大島でもかなり雨には悩まされたのだが、東京の雨はなにか全く別の物であって、つまりは雨に関係なく全ての時間がいつも道理流れている事に起因しているようにも感じられる。つまり気分が滅入る事以外いつもと何も変わらない1日が過ぎて行く。この都会では雨だからできない事などそうそう無いと言う事なのか、、、

先週思いついた沖縄の撮影スケジュールを決めて予約を入れて見たのだが、チケットの購入は今しばらく見合わせる事にした。週末迄まってギリギリに購入した方が、急なスケジュールに対してリスクが少なくなる。車で出掛ける場合とはちがった緊張があるのだが、決めてしまえば変えられない分だけ、勢いがついて良い部分もある。いつ迄もだらだら先送りする自分の性格からすれば、むしろこちらの方が良いのかも知れない。

決めかねていた奄美の写真のサイズを決め、なんとか最終出力を再開する。今日は取りあえず10点程。サイズの小ささが画面のイメージをはっきりさせると言う事を何故だか久しぶりに感じ取る事が出来た。いずれにしてもサイズはとても重要な要素である。


2/1 久しぶりに家事や雑用をこなしていたのだが、午後になって先週出かけた奄美大島の黒糖焼酎を飲んでみたくなり、渋谷のデパート迄買いに出かける事にした。デパートの食品売り場の込み合いぶりは不況など何処にも無いような感じである。

ここ最近の焼酎ブームとは言え、奄美大島でしか飲まれていない黒糖の物は余りにも在庫している種類が少なく、それでも何とか目当ての物を見つけて久しぶりに喜んで帰宅したのだが、大層な瓶に入って結構な値段がした割には、今一つ原酒としての力強さが感じられず、いささか失望させられた。

焼酎など自分でわざわざ探して買い求めると言う事は、洋酒党の私にはめったに無い事なのだが、先月北海道のスタジオで御馳走になった黒糖焼酎が妙に忘れられず、奄美にいる時に1本買って飲んで見たのだが、旅行中の節約と、地元に相応しく最も安い物を入手したせいで、今一つ味けなく、何時かもっと旨い物を買って飲んでみたいと思っていたのだが、その気持ちは東京に戻って奄美の写真を整理している内にどんどん膨れ上がり、取りあえず一番高い物を買ってみようと言う、旅の節約のリバウンドのような形となって行動にあらわれてしまったのである。

一番高い物とは言え焼酎だから、たいした事は無いのだが、最近のウィスキーの値段とくらべると、妙に割高に感じてしまうのは私だけだろうか。ともあれ、もう一度くらいは札幌で飲んだあの旨い焼酎を味わってみたいので、次はデパートの物産展にでも出向いてみる事にしたい。

殆どの食べ物は日本の物が旨いと思うのだが、酒だけはどうも私の口にはあわないのである。


mail
更新履歴