上の2点はそれぞれPXPのオリジナルネガとリスフィルムで作ったハイライトマスクです。この写真は用水池の水面に出来た
泡のような物が風で押しながされて集まった造型を撮った物で、もともとの被写体のコントラストが非常に弱く、かといって
水面の上には無数に細かい埃が浮いている為、あまり高いコントラストの処理をすると、水面の柔らかな感触が全くなくなって
ざらざらした質感に仕上がってしまいす。
一応ノーマルのスケールで撮影し、後から救済方法を考えるつもりでしたが、やはりコントラストの高い紙を使ってプリント
した物は好ましい仕上がりが得られず、最終的にはマスキングを思いつきました。ネガの部分補力などが他に考えられる処理
ですが、濃度の良くて、ブレていないネガが一枚しか無かった事と、適当な処方が思いつかなかった為、断念しました。

実際の処理ですが、下に在るようにリスフィルムで何種類かのポジをコンタクトプリントで作成し、そのポジからコンタクトで
ハイライトだけのネガを作成します。濃度のちょうどよい物を重ねてプリントできるようにオリジナルのネガと端の部分で貼り
あわせれば完成です。パンチで合わせている訳では無かったので、かなり貼り合わせるのに苦労しましたが、カットした
シートフィルムの端の部分などをまず貼り合わせ、それを貼り合わせるような方法が良い様です。使う引伸し機のキャリア内の
スペースに合わせて色々な方法が在ると思います。

マスクの効果ですが、やはり引伸しのサイズによっては無理が在りました。当時の引伸しレンズが短い事なども在り、個展の
シリーズに入れる事は出来ませんでしたが、画像そのものの雰囲気はかなり再現されています。シャープなマスクを重ね合わせる
と言う発想は、引き伸すプロセスには少し無理が在るかも知れません。


撮影時の印象がどこ迄再現されるかと言う事は、調子再現と言う科学的に聞こえるプロセスだけによってなされる物では無い
ように感じる時が在ります。多くの作家のように直接手作業でレタッチを施す事も、正当な手法であるとは思うのですが、私の
好みとして、出来るだけ光と科学の中で再現して行きたいと考えます。

11/24.03