プリントの仕上りを予測しにくくしている要因の一つに「ドライダウン」があります。
上の2枚の写真はドライダウンを比較する為に印画紙の半分だけを乾燥させた物で右の写真はその一部を拡大した物です。
乾燥させた下の部分が水滴のある上の部分よりも幾らか濃度が高くなっている事が確認できます。
この現象は全ての印画紙、全てのイメージに必ず同じように起こる訳ではなく、ほとんど見受けられない場合もあります。
原因として複合的にゼラチンの状態、銀粒子の形状、紙質、増白材など色々な事が想像できますが、
最終的には経験的に把握する事が一番重要です。ドライダウンの量をデータとして作品とともに記録しておけば
同じ印画紙で同じような状況については、少しづつ、把握できるようになって来ます。
A.アダムスのテキストには電子レンジでテストプリントを乾燥する方法が紹介されていて、私自身も何度か試した事があります。
最終的にはドライダウンを見越して濃度の違う何種類かのプリントを乾燥させて、そのデータをもとに最終的なプリントに
取り掛からなければならないのですが、少しでも乾燥時の状態に近い感覚で濡れたプリントを観察する為に
次のような方法を取っています。

まず、水洗中のプリントを黒いアクリル板に乗せて水分をスポンジ等で拭い取ります。
このアクリルは3ミリ程度の物で、乾燥の為の水切りなど、用途別に厚さ、色、
大きさを変えて何枚かを用意してある物ですがとても役にたちます。
プリントをファイナルに乾燥させる用途の物は、強い力で両面の水分を拭き取るので
厚みが必要ですが、このように濃度を判断する場合などは薄い物でも大丈夫です。
黒いアクリルを使うのは裏からの光の回り込みと、紙質での乱反射をできるだけ少なく
する為ですが、周辺のアクリルの黒さが判断の邪魔になる場合は白のアクリルを使います。
次に重要なのが観察状態での光の角度で、印画紙をアクリルに張り付けるのは
光に対して自由な角度で、プリントを観察する事にとても役立ちます。
経験的には、最も反射の少ない角度、天井の照明であれば、プリントをほぼ垂直に
立てた状態が乾燥した状態を予想するのに適しているように感じます。

観察状態
天井照明であれば、このように立て掛けた状態で、あるいは手で持って照明の下で角度を変えながら判断します。
物理的には黒のアクリルで判断するべきなのですが、画面によっては余白のせいでよけい明るく感じてしまう事もあります。
その場合は、光を通さない白いアクリル板を使用します。

最初の2枚の写真の半分だけ乾かしたプリントは左のような方法で作った物です。画面上方、この写真では左側になりますが、白いアクリル板を被せて多くの水分を含ませています。この状態で、右側のみをスポンジで拭き取り、ドライヤーで迅速に乾燥させた物です。
撮影した照明は暗室内の蛍光灯で、真上に近い位置で、最もドライダウンの効果が解る状態を表しています。このように正面からの照明時に、濡れたプリントは最も明るくなり、結果的に乾いた時との差が広がります。
一見面倒臭そうに思えますが、このようにしてプリントを判断する事はとても重要で、結果的には時間の短縮にもつながります。水分を取り除き、きれいにフラットな状態にするだけでも、色々な細部の状態が見えてきます。
このサンプルのプリントは16x20インチ、アクリルのサイズは45x60cm、張り付けた状態でそのまま20x24インチのバットに入れる事が出来ますので作業は以外と簡単です。

4/28.05