トーニング処理は殆どのプリントに行っています。調色としてではなくアーカイバルなプロテクトとしての処理です。
これはプリントの耐候性を上げる為の物で、イメージをできるだけ変化させずに画像の経時変化を少なくする事が目的です。
同じような目的で他にも幾つかの方法がありますが、効果が実証されている物の中では比較的簡単な方法です。
更に簡単な方法でFuji AGガードと言う選択肢もありますが、個人的には未処理で浸透した薬剤が水溶性である点に不安があり、
表面の質感の変化、レタッチに関する点なども含めてバライタ紙に使用する事は避けています。

コダック社のラピッドセレニウムトーナーはリキッドタイプで、毒物を含んでいる為限られた販売店で扱われています。
原液をあつかう時には注意が必要でメーカーの指示に従って慎重に作業して下さい。
色調を効果的に変化させる調色とは違い、できるだけイメージを変化させない事が必要なので、上の写真のように
未処理のプリントを脇において比較しながら作業を進める事が望ましいと思います。
処理液の濃度は1:20から1:40で時間は20℃前後で2分から4分。あく迄色調の変化を確認しながら最低限の
時間で切り上げる事が必要です。すみやかに水洗に移した後もよく撹拌し水洗中も姑くは処理が進行していますので
確認を怠ってはいけません。
処理の進行中の印画紙は少しずつ黒の色調が深くなり更に処理が進むと濃度の高い所から青みをおびて来ます。
その時点まで処理を進めてしまうと中止した後も変化は続きますので、かなり青黒調のプリントになってしまいます。
ですから、未処理のプリントと常に見比べながら僅かでも変化を感じたらすぐに処理を切り上げる事が必要です。

一般的な処理液の作り方と、実際に行っている処理

通常の定着までの処理
第一水洗処理5分
イルフォードウォッシュエイド10分
第2水洗処理10分
ハイポクリアリングエージェント メタホウ酸ソーダ
237cc 使用液4.7L 80g
最終水洗処理60分

処理液は後処理の水洗時間を短縮する為にハイポクリアリングエージェントで薄める事が推賞されているので、溶解量は
そのソリューションの4.7Lを基準になりますが、溶解後の物であればこの量に準ずる必要はありません。
この使用液でトナーの割合は5%弱。かなり高濃度ですので変化はすぐに起こり始めます。
小さな印画紙を処理する時は良いのですが16X20程度の大きさになると、濃度を3%程度に下げて、処理時間を3分程度に
設定した方が安定した処理が行えます。
この処理液の濃度はアーカイバルに安全な結果を優先する場合の物ですのでアルカリ材も添加されていますが、
必ずしも必要と言う訳ではないと思います。
殆どの場合、私はこの処理液をトナー180ccで処方し、3分程度の処理を行っています。
幾らかの色調の変化はありますが耐候性を考えると必要な処理だと思います。印画紙によっては特に不快な色に変化する
場合もありますので、濃度、時間等は必ず実験的に処理した上で決めて下さい。
常にこの処理をしていて感じるメリットですが、展覧会の時に同じ壁面に色々な種類の印画紙を展示した場合など
それらの紙の色調の違いを幾らか緩和してくれる事があります。プリント直後はかなり不快に感じる色調でも
最終的な展示状態では全体のバランスを整えてより強い表現を生み出しているように感じます。

ILFORD WASHAID (左)イルフォードから供給されているバライタ用の水洗促進剤 ナボックス(左)フジから供給されるメタホウ酸ソーダの商品名


KODAK hypo clearing agent(手前)コダックから提供されている水洗促進剤 ニワルク(右)K)NNC(ナニワ)から供給されるメタホウ酸ソーダの商品名

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