Digital Masking Process

ネガのマスクには色々なタイプが在りますが、一般的には、レジスターピンで固定
して直接重ねてしまう物が殆どだと思います。コンタクトプリントやデュープの
場合に就いては、色々資料も在るのですが、引き伸ばす場合のマスキングに関しては
あまり見つけられず、自己流に試してみたものばかりですので、他にもっと優れた
アイデアが在るかも知れません。
マスキングと言うとシャドー部へのマスクを想像する場合が多いと思いますが、私の
場合、ハイライトに掛ける事の方が必要性が多い様です。
シャドーに掛ける場合は、また色々違った方法が在るようで、10年以上前ですが
紫外線で感光するガラス板にネガを重ねて、小型ストロボで露光する事によって、
一時的に濃度の上ったガラス部分がマスクとしてそのまま使用できるMInit Mask
という商品も見た事が在ります。他のフィルムや感光材量から、ケミカルプロセスで
作るマスクに就いては、次のページで紹介します。
ロールオーバーでマスクを重ねた写真になります

ハイライトマスクの作り方および使用方法 作品 Image99ex 04

まずこのマスクの必要性ですが、上の作品の場合、コンクリートの表面に絡む植物を撮影した物ですが、全体の輝度差は低く、
かといってショートスケールを使ってあまりにガンマをあげてしまっては、コンクリートの質感が損なわれてしまいます。植物
のダイナミックな形は肉眼では把握できていても、実際にはコンクリートの中に沈み込んで、リアルに再現する事は出来ません。
この植物のハイライトにマスクを掛ける事によって、コントラストの低い印画紙を選択し、コンクリートの質感を不快な物に
せずにフォルムを際立たせる事が出来るのです。

まずこのネガをスキャニングし、まん中に写っているようなハイライトだけのぼけマスクを作るのですが、作業そのものは
初歩的なフォトショップの操作で作れると思うのですが、基本的にはエリアを選択し、濃度を調整してぼかす作業が中心です。
最終的な出力はエプソンのインクジェットプリンターを使い、OHP用のシートに出力しますので、あく迄濃度の調節やぼかし
具合は経験に頼る部分となります。実際にフィルムに合わせて使用する時は、キャリア上で約5ミリ浮かした状態で使用します
ので引伸し時の蛇腹の延びに合わせて、数%拡大しておく必要性も在ります。プリンターの出力では、ドットの状態や、濃さが
が気になるかと思いますが、その部分はネガとの距離を離して使用する事で対応しています。
このプリンターのドットの問題ですが、あく迄ハイライトにマスキングする事が前提で、引伸し機の構造の所でも触れましたが
ハイライトであればネガ自身の濃度が高く拡散率も高いので、幾らか離すだけで焦点を結ぶ可能性は少なくなります。やはり
シャドーにマスキングするのであれば、ドットやトーンの問題も深刻ですので少なくとも、散光式の引伸し機を使われる方が
トラブルが少ないかも知れません。

設置方法ですが、簡単な一部だけの物であれば、上の写真のように、ネガキャリアを上下でずれないようにしっかり固定した後、
キャリアの上の面に目視で位置を決めて、マスキングテープで固定しています。
殆どの場合は結構広い範囲ですので、位置決めはかなりシリアスになります。その場合はキャリアを引き伸ばし機にセットして
倍率やピントも合わせた後で、引伸しレンズのみ取り外し、ヘッドのフィルターポケットに減光用の乳白板を挿入した後、
取り外した引伸しレンズのマウントから、直接マスクの位置を調整し、ヘッドを下ろす事によって固定します。この場合OHPの
シートのサイズがかなり大きめである事が役に立ちます。

私の場合は一枚の作品を何日も掛けて仕上げる事が習慣化していますので、このような操作はさほど手間とは考えないのですが、
写真に就いてある程度手軽なイメージを持っている人にはかなり抵抗が在るかも知れません。よく注文された作品の、サイズを
指定して来る方もいるのですが、製作不可能な場合もあって、お断りするのですが、説明しても理由が旨く伝わらず、残念に
思う事も在ります。

次のページでは以前実験的に行っていた、リスフィルムによるハイライトマスクを紹介します。

11/24.03