これは私が実際に使っているバキュームホルダーです。
93年にこのシステムのを自作してから格段の画質の向上と幅広い被写体
への対応が可能になりました。
通常の被写体の場合、数分の露光ではホルダー内部でフィルムが動くと
言うような事はあまりありません。
何度かフィルムのブレによる失敗を経験するうちに単に時間ではなく
光の強さや画面の構成にも関係があるような気がするのです。
極端に減感されたり、輝度差の大きい被写体の場合はその可能性が高く
私の作品のの性質上かなり高性能な物を作る必要がありました。

フイルムホルダーの構成要素は上の写真のようになっています。
ホルダー本体、接続ホース、空気室部分、延長ホース、ポンプ本体、この5つの部分にわけてそれぞれの特徴を説明していきます。

ホルダー本体

改造に使用するホルダーはフィデリティの物を使っています。
フィルム装填部分の並んでいる白っぽい部分がバキューム用の穴になります。
実際はもっと目立たないので分かりやすくしてありますがホビー用の電動ドリル
をドリルスタンドに固定して最も細いドリルで開けた物です。穴の周りを完全に
平面化する事も重要です。作り方は後日ホルダーを製作した時に紹介しますので
ここではその特徴を説明していきます。穴の配置はテストの結果効率の良い位置に
決定し、ホルダーの裏面は各部の隙間を完全にシリコンで封入したのち引き蓋を
シリコンで接着してあります。細かい部分迄密閉し気密性を完全な物にします。
裏面の引き蓋に吸盤用のシートを張り付けたのち中心部分の決められた位置に
同じドリルで4〜5ケ所の小さい穴を開けてあります。
当初はホルダーの側面に固定用のつばを付けていたのですが意外とカメラのロック
機構だけでも十分なので外してしまいました。ピントグラスを外して直接固定する為
使用するカメラによっては必要となってきます。
シリコンによる接着部分を保護する為にテープを貼ってありますが、それ以外は
厚みや大きさもオリジナルと全くかわりません。

接続ホース

接続ホースはホルダーと空気室、あるいはポンプ本体を気密的につなぐ物で
接続そのものは先端部分の吸盤によって不圧が成立した時にのみホルダーの
吸盤シートに固定されます。
構造は吸盤にシリコンのホースを貫通させて接着した物で低温下でも硬化しない物を
使用しています。
この接続方法はホルダーの背面が塞がれる為にピントグラスを外さなければならない
という点がやや面倒だと思われるかも知れませんが、構造的に空気の吸い出し口を
取り付けなくてよい事や、フィルムにかかっている不圧を常に目で確かめられると言う
絶対的な利点があります。フィルムの装填時になんらかの理由でフィルムがずれている
場合や途中でなんらかの不具合が合った時は、すぐにホースが外れて失敗を未然に
防ぐ事ができます。

空気室

空気室は本来バキュームポンプの空気の脈動を抑える為に設置しました。
制作当初バキュームポンプは魚用のエアーポンプで本来空気を送り出す用途に設計
されており不圧を発生させる為には、中の弁の部分を張り付けるなど改造を要し、
そうした上でもレシプロポンプの性質上かなり大きな空気の脈動が発生していました。
その結果フィルム面での顕微鏡レベルでの振動が発生しやすく、吸盤を大きくする、
ホースを長くするなどいろいろ試しましたが、結局途中に柔らかい空気室を作って
不圧を一定に保つ方法をとる事にしました。
素材はブロアーブラシのゴム球部分を使いシリコンでホースを固定しながら
黒のゴム材で包み込んでいます。不圧がかかっている時は写真のように適度に萎み
ポンプの強さに応じて、不圧を一定に保ってくれます。
現在ポンプはロータリー式に変わり幾らか脈動は少なくなりましたが、フィルムの
ズレなどに対して一時的に強い不圧をかけたい時など、この部分を摘んではなす
事によってかなりの力を与える事ができます。

延長ホース

延長ホースは必ず使用します。これはポンプの振動をカメラに伝えない為で材質は
収納が容易で低温下で硬化しない物であれば大丈夫です。
写真の物は黒のゴムホースで2m程度の長さがあります。

ポンプ本体

バキュームポンプには魚用の物を釣り具店で購入して使っています。写真の物は
ロータリー式になっておりホースを付け変えるだけでそのまま使えます。
以前は同じメーカーの前の型を使っていたのですがレシプロポンプで振動や音も
大きくバキューム式にするには内部の改造も必要でした。
電池の寿命も非常に長く12時間ぐらいは平気で使用できます。強さも2段階に
調節できて故障もいままで一度もありません。

実際の使用状態

実際にカメラに装着した状態です。
ピントグラスを外して左右のロックで固定しています。
当初ホルダー側にロック用のつばを付けていたのですが必要無い為外して使って
います。市販のバキュームホルダーも参考の為に見てみたのですが多くの問題が
残っている様な気がしました。後日ホルダーを製作する機会には制作行程も
紹介できると思いますので御期待ください。

update 1/22.03