プリントに関する一連の作業の中で、あまり好ましい事ではないのですがダストスポットが入ってしまったり、僅かなスクラッチのあるネガを処理しなければならない場合があります。
また、慎重に作業していても乾燥後、全ての行程を終えてからプリント面にキャリア上のゴミを発見してがっかりする事もあります。
あまりひどい物やプリント作業中であればやり直す事も出来ますが、程度によっては手作業によるスポッティングを行い、それらのダメージをできるだけ目立たない物にしていきます。

スポッティングの道具に就いて


上の写真は一般的なスポッティング用の染料で、様々なトーンに合わせて色々なカラーが用意されています。紙にしみ込ませてある
インクはボトルの順番に6種類、手前の列の3種類は、比較の為に現在は発売が中止になったスポットーンの物です。
これらのインクを単独で、あるいは混ぜ合わせ、適度な濃度に薄め、直接印画紙の乳剤面にしみ込ませて修正します。
実際の作業は次のページで説明しますが、これらの染料は一度乳剤にしみ込ませると、殆どやり直す事は出来ませんので
薄い濃度から始め慎重な色合わせが必要です。
紙にしみ込ませてある写真で下の画像は濡れている状態です。乾燥によりかなり色調は変化しますのでそれを考慮しながら
経験的に、またテストと平行しながら作業を進める事が必要です。
これらの染料は濃度を加えて行く物なので、ネガのピンホールなどの黒くなった部分を白くする事は出来ません。
その場合一般的にはエッチングと言う印画紙の表面をナイフで削り取る作業を行うのですが、私はネガをスポッティングして、
プリント上でふたたびスポッティング処理をしますのでよほど小さな部分でない限りエッチングは行いません。

こちらは最近製造が中止されたスポットーンの3種類です。かなり古くなって、全体的に青みが強く変色してきています。入手して10年程たった物ですが、このようにインク自体は使わない状態でも、使用した状態でも、幾らかは変色します。
使用するインクが将来どのように変色するかを予測する事は難しいのですが明るいグレーの部分を広い範囲で修正した場合などは気になる所です。一般的には少しづつ冷たい色に変化する傾向がある様ですが、最近のマーシャルのものについては未知の部分です。
ネガのコンディション、器具の状態に注意し、最低限の使用にとどめたい物です。

使用する筆の種類は、様々ですがとにかく濃度に合わせて沢山の物を用意します。
明るい色に使用する筆は他の用途には使わず、できるだけ良いコンディションを維持するようにします。一度違うカラーに使ってしまうと、薄い色ではなかなか色が取れない物です。
印画紙を膨潤させたり逆に水分を拭き取る為の筆もあると便利です。
私の使い方と好みによる物ですが、イタチのような柔らかい筆は使いづらく、同じ面相でも毛足の短いかたい物を探して使っています。

次のページで実際の作業を解説します

5/06 .05